万　葉　の　会 ・ 月　例　歩　き　録
例会日 2007年04月05日(木)　晴れ
行　先 山辺の道…柳本から桜井（2）
　　　　　　　　【第2部/桧原・井寺池から金屋･磯城嶋公園まで】
ルート 柳本･黒塚展示館-崇神天皇稜-櫛山古墳/万葉歌碑(1)-景行天皇稜/万葉歌碑(2)-穴師・相撲神社/万葉歌碑(3)-穴師坐兵主神社/万葉歌碑(4)-車谷/万葉歌碑(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)-桧原神社/昼食-井寺池周辺/万葉歌碑(12)(13)(14)(15)(16)-桧原神社/万葉歌碑(17)-山清水/万葉歌碑(18)-玄賓庵-神武天皇聖蹟碑/万葉歌碑(19)(20)(21)-狭井川-狭井神社-大神神社/万葉歌碑(22)(23)(24)-平等寺/万葉歌碑(25)-志貴御縣坐神社/万葉歌碑(26)-金屋の石仏-海石榴市/万葉歌碑(27)-金屋河川敷公園/万葉歌碑(28)-仏教伝来地碑/万葉歌碑(29)-磯城嶋公園/万葉歌碑(30)(31)
（今回の歩き録は、写真がたくさんありますので、第1部と第2部に分けて掲載しています)
【第1部/柳本から桧原神社まで】へ→
【第2部/桧原・井寺池から金屋･磯城嶋公園まで】
　桧原神社で昼食のあと、午後の学習に出発。次は桧原神社から真西に下って、井寺池周辺の『万葉歌碑（12）』、『万葉歌碑（13）』、『万葉歌碑（14）』、『万葉歌碑（15）』、『万葉歌碑（16）』へ向かう。
《万葉歌碑（12）》

鳴神の　音のみ聞きし　巻向の
　　桧原の山を　今日見つるかも
　　　　　　（作者/柿本人麻呂）　（筆者/千　宗室）		 《万葉歌碑（13）》

三諸は人の守る山　本辺(もとべ）はあしび花咲き
末辺(うらべ）は椿花咲く　うらぐはし山ぞ　泣く児守る山
　　　　　　（作者/未詳）　（筆者/久松潜一）
《万葉歌碑（14）》

髙山は(かぐやま）　畝傍雄男志(おおし）と耳梨と
相あらそひき神代より　かくにあるらし古昔(いにしへ）も
然にあれこそ　うつせみも　嬬(つま)をあらそふらしき
　　　　　　（作者/中大兄皇子）　（筆者/東山魁夷）		 《万葉歌碑（15）》

大和は国のまほろば　たたなづく
青かき山ごもれる　大和し美（うるわ）し
　　　　　　（作者/倭建命）　（筆者/川端康成）
　この「井寺池」辺りもまた、桜がいっぱい。桜のこずえを飾り縁にしたように二上山をとらえることができた。思わずシャッターをきった。
　そして池の周りからは大和平野が一望できて大和三山の「畝傍山｣「耳成山｣と「二上山」が、また背中の後には、三輪山が美しく迫ってくるようにかぶさってくる。景色を楽しみ、万葉歌を詠い、充実したこの日の後半が始まっている。｢万葉歌碑(14)｣「万葉歌碑（15）」はまさにこの辺りから詠ったのかと思われるほど、歌と情景が一致していると感じるのは誰しも同じと思える。

(桜のこずえを飾り窓にしたような二上山）
(三輪山を背に畝傍山を望みながら歌碑(14)を詠う）
(倭建命が詠った大和の情景/畝傍山･耳成山・二上山が一望)・・・歌碑(15)

《万葉歌碑（16）》

　いにしえに　ありけむ人もわが如（こと）か
　　三輪の桧原に　かざし折けむ
　　　　　　（作者/柿本人麻呂）　（筆者/吉田富三）

　井寺池の南側にある最後の一つの歌碑（16）の歌を詠って池のも周りを一回りした形で、桧原神社に戻ってきた。
　再び山辺の道を大神神社に向って歩き始めて桧原神社のすぐ南側に『万葉歌碑（17）』がある。
《万葉歌碑（17）》 　歌碑(17)から歩きだして2分で、2つ目の『山邊道』道標があった。

古の　人の植ゑけむ杉が板に
霞たなびく　春は来(こ)ぬらし

（作者/柿本人麻呂）　（筆者/徳川宗敬）
　
　しばらくは鬱蒼と茂った木々の中の狭い道を進むことになる。「山邊道」道標から更に2分で、山の清水が流れ出てくる小さな滝つぼに出る。薄暗いこのところに高市皇子の歌『万葉歌碑（18）』がある。
「十市皇女が葬られているのがこの辺りで山吹の花が咲く清水が流れる、清水を汲みに行って逢いたいが道がわからない」と詠っている。

《万葉歌碑（18）》

　　　　　　　　　　　　　　　山吹の　立ちしげ美当（みた）るやましみつ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　久美（くみ）にゆか免（め）と　道の志らなく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（作者/高市皇子）　（筆者/安田靱彦）
　高市皇子の歌碑（18）からは『玄賓庵』を通って『狭井川』へ出てくる。「狭井川」沿いの三輪山が大きく見えるところに『神武天皇聖蹟碑』が建てられている。その周囲には『万葉歌碑（19）』、『万葉歌碑（20）』、『万葉歌碑（21）』がある。この10分ほどの道のりでちょっとしたハプニングが起こった。歌碑（19）をみんなで詠い終わったときに、人数が足りないと誰かが言い始めた。お互いにそれぞれを確認すると確かにそうである。多分、玄賓庵のところの分かれ道で間違えたのだろうと、到着を待つことにした。待つこと15分、西の方から数人の方が現れた。
“ああ・・よかった”とひと安堵した次第。みんな揃ったところで、詠い残した歌碑(20)、（21）を朗詠。　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(はぐれ人をみんなで待つ)
(神武天皇聖蹟碑）
《万葉歌碑（19）》

　葦原の　しけしき小屋（おや）に　菅畳み
　　いやさや敷きて　わが二人寝し

　　　　　　（作者/神武天皇）　（筆者/北岡壽逸）
《万葉歌碑（20）》

　うま酒三輪の山　青によし　奈良の山の山の間に
　　　い隠（かく）るまで道のくま　いさかるまでに
　　つばらにも　見つつ行かむをしばしばも
　　　　見さけむ山を心なく　雲の隠（かく）さべしや
　　
　　　　　　（作者/額田王）　（筆者/千田　憲）
《万葉歌碑（21）》

　狭井川よ　雲立ち渡り　畝傍山
　　木の葉騒(さや)ぎぬ　風吹かむとす

　　　　　　（作者/伊須気余理比売）　（筆者/月山貞一）
　このあと、いまは石垣が積まれて趣が全くなくなっている狭井川を渡って『狭井神社』向かっていった。神社へは狭くて勾配のきつい階段状の坂道を進むことになる。皆さんチョットしんどそうだったが、今日の行程の約半分を消化したことになる。元気を奮い立たせて、残りの道のりを頑張りましょう。

(狭井川）･･･石垣積みになっている
（狭井川より狭井神社への狭い坂道)
(狭井神社)
　『狭井神社』では、お参りして拝殿の後にある「霊泉｣を飲んで、ご神体の三輪山登山口を見るだけで、大神神社に向かうことにした。
　『大神神社』で皆さんそれぞれが拝殿でお参りを済ませて、厳かな神域の雰囲気を味わった後、拝殿前の大階段で記念撮影。
【大神神社】
　　御祭神　大物主大神（おおものぬしのおおかみ）
　　 配　 神　大 己 貴 神（おおなむちのかみ）
　　　　　　 　 少 彦 名 神（すくなひこなのかみ）
大神神社には大物主大神の『和魂（にぎみたま）』をお祀りしている。　和魂は「幸魂（さきみたま）」と「奇魂（くしみたま）」の２つに分けられ、「幸魂」は運によって人々に幸せを与え、収穫をもたらす。「奇魂」は奇跡によって幸を与えるという
（「大神神社｣及び「三輪山｣についての詳しい記事は、「シニア青年･水無月生」H/P内の別ページ『古代史を歩く･大神神社』及び『古代史を歩く･三輪山』をご覧ください）

(大神神社/己の神杉と拝殿）
(大神神社で4･5･6班の方々）
　記念撮影のあと神社宝物館の横にある『万葉歌碑（22）』、『万葉歌碑（23）』、『万葉歌碑（24）』へ。歌碑(22)は楽譜の付いたもので、今まで見てきたことのないユニークなものである。
《万葉歌碑（22）》

大和は国のまほろば　たたなづく
青かき山ごもれる　大和し美し

　　　（作者/倭建命）　（筆者/黛　敏郎）		 《万葉歌碑（23）》

うま酒を　三輪の祝(はぶり)が
やまてらす　秋のもみぢば
ちらまくをしも
　　（作者/長屋王）　（筆者/堂本印象）		 《万葉歌碑（24）》

この神酒はわが神酒ならず
倭なす　大物主の醸(か)みし神酒
幾久幾久（いくひさいくひさ）
　　　（崇神紀）　（筆者/和田嘉寿男）
　
　「大神神社｣を後にして昔の初瀬街道を金屋方面へ進むと、5分余りで『平等寺』に到着。平等寺の角に昔の道標が残っている。
「右はつせ　いせ」「左三わ明神へすく」と刻んでいる。
　『平等寺』には『万葉歌碑（25）』。お寺の境内はいつ行っても丹精に掃除が行き届いている。この日は桜が満開に咲いているので、塔の美しさが一層際立って見えた。
　「平等寺｣から民家が並ぶ曲がりくねった車がやっと通る巾の田舎道を進むと、『崇神天皇磯城瑞垣宮跡』の『志貴御県坐神社』にある『万葉歌碑（26）』へ。
　この道の途中で3つ目の『山邊道』道標を確認した。
　「崇神天皇磯城瑞垣宮跡」から5分で有名な『金屋の石仏』へ。ここでも気持ちよくいっぱいに咲いた桜の花の下で説明をしてもらった。
【金屋の石仏】
二体の石仏は、左が弥勒、右が釈迦と推定される。高さ2.2m、巾80ｃｍの粘板岩に浮き彫りされている。貞観時代から鎌倉時代のもの。右の釈迦が彫られた石は石棺の蓋と思われる。「金屋の石仏｣の次は『海拓榴市』にある『万葉歌碑（27）』。
《万葉歌碑（25）》

わが衣　色にそめなむうま酒
　三室の山は　もみぢしにけり
　（作者/柿本人麻呂）　（筆者/林　房雄)
　　		 《万葉歌碑（26）》

磯城島の日本(やまと)の国に人二人
ありと思えば　何か嘆かむ
　　（作者/未詳）　（筆者/山口誓子）
　　

(金屋の石仏･弥勒)
(金屋の石仏･釈迦)
《万葉歌碑（27）》

紫は灰(ほ)のさすものぞ　つば市の
八十のちまたに　逢える子や誰
　　（作者/未詳）　（筆者/今　東光）
　海拓榴市の歌碑(27)を過ぎると、本日の学習ルートもようやくおしまいの地点が近づいてきた。いまは「金屋河川敷公園」として整備をされているが、その昔は、大和朝廷の重要な交易地であった。この公園の中に『万葉歌碑（28）』、『万葉歌碑（29）』及び『仏教伝来之地碑』がある。
【仏教伝来之地】
万葉の時代は、この付近は舟で難波津から大和川を遡ってきたら終着となる地点。外国の使節が日本にやって来て最初に上陸する大和の都の港であったとされる。欽明天皇の時代に百済王からの使者が「釈迦仏像と経典」を持ってここに上陸したとされる。これを記念として、この地を「仏教伝来之地｣とした。
《万葉歌碑（28）》

夕さらば　かはず鳴くなる三輪川の
　清き瀬の音を　聞かくし良しも

　　（作者/未詳）　（筆者/樋口清之）

(仏教伝来之地碑と万葉歌碑28）
(満開の桜の中の「仏教伝来之地碑」
の前で「万葉歌碑28」を詠う)

《万葉歌碑（29）》

こもくりの　泊瀬(はつせ)の山
　青幡(あおはた)の　忍坂(おさか)山は
　走り出の　宜しき山の出で立の
妙(くわ)しき山ぞ　惜(あたら)しき山の
　荒れまく惜(お)しも
　
　　（作者/未詳）　（筆者/有馬生馬）
(初瀬川から見る榛原方面・鳥見山)
　初瀬川の北岸の「仏教伝来之地｣から南岸に渡って「磯城嶋公園｣へ、『欽明天皇磯城嶋金刺宮跡』が本日の終着地点。柳本から11ｋｍの道のりになる。数多くの万葉歌碑を訪ねた今日の最後の学習ポイントは『万葉歌碑(30)』、『万葉歌碑(31)』になる。なお、｢歌碑(31)」は予定になかった番外の歌碑でした

(欽明天皇磯城嶋金刺宮跡）
《万葉歌碑（30）》

志紀し間の　やまとのくには
こ鳥(と)たま野　　さ紀はふ国ぞ
まさきくありこそ

（作者/柿本人麻呂）　（筆者/平泉　澄）		 《万葉歌碑（31）》

泊瀬(はつせ)川　速み早瀬を
むすびあげて　あかずや妹と
問ひし公はも
　
　　（作者/未詳）　（筆者/辰巳利文）
　これを以って今月の万葉の会・例会「山辺の道｣は全ておしまい。
このあと、近鉄朝倉駅まで20分ほど歩いて電車に乗車。榛原乗換えで、桔梗が丘へは18時前ごろに帰着でした。皆さんお疲れさんでした。
（第1部･第2部の長きに亘ってのページを最後までご覧いただきましてありがとうございました）
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